GUIDE / キャリアの意思決定 / 更新 2026-09-21
インフラ資格、CCNAより入門クラウドが語られる逆転とは

インフラ志望の人がキャリア相談で立てる計画は、たいてい似た形をしている。「まず簡単なLPICを取って、次にCCNAでネットワークを固めて、実務を積みながらいずれネットワークスペシャリストを目指す」。難易度の低い階段から一段ずつ上っていく、この組み立て方は一見とても堅実に見える。順番に積み上げていけば、いつか天井まで届くはずだからだ。
だがこの階段には、ひとつ見落としがある。階段の段差は「試験の難しさ」で決まっているが、採用の現場が資格を評価する順番は、必ずしも難易度の順番とは一致しない。難しい資格ほど重用されるとは限らないし、簡単な資格が軽視されるとも限らない。むしろ今のインフラ求人を見渡すと、この二つの順番はかなりズレている。
難易度の階段と、求人が名指しする順番は別物
難易度で並べれば、LPICやCCNAは比較的早い段階で挑める資格で、ネットワークスペシャリストのような国家資格は経験を積んだ先にある本命、という位置づけになる。この並びは資格制度としては合理的で、多くの人が違和感なく受け入れている。
問題は、この並びを「現場でどれだけ重視されているか」の並びだと思い込んでしまうことだ。試験の難易度は、あくまで出題範囲と合格率から決まる指標であって、求人票に書かれる頻度や、現場での話題の量とは別の軸にある。難易度の階段を上る計画は、実は「どの段に上れば求人に近づくか」という問いには何も答えていない。
言及数に表れる、現場の重心のズレ
その「現場でどれだけ語られているか」を覗く手がかりとして、Qiita上の資格別の言及記事を資格ごとに集計する、という方法がある。これは試験の難易度や資格そのものの価値を測るものではなく、あくまでその資格がどれだけ話題にされているか、現場の関心がどこに向いているかの目安にすぎない。その前提を踏まえたうえで、2026年8月時点の集計を見ると、インフラ系資格のあいだにかなりの偏りが見える。
難易度の階段でいえば中盤に位置するネットワーク系資格、CCNAの蓄積言及数は292件だった。一方、クラウド関連のAWS認定ソリューションアーキテクト アソシエイト(SAA)は1834件、入門編にあたるAWSクラウドプラクティショナー(CLF)でも721件に達している。難易度でいえば「まだ手前の段」にあるはずの入門クラウド資格でさえ、CCNAより2倍以上多く語られている。これは、資格の優劣を示す数字ではなく、今のインフラ現場で交わされている会話の重心がどこにあるかを示す数字だと捉えるのが正確だろう。
この偏りが起きている理由まではこの数字だけでは分からないが、少なくとも「難易度の低い順に取れば、需要の高い順にも近づいている」という前提は、この非対称を見る限り成り立っていない。難易度の階段の低い段を上っていたつもりが、求人の重心とは別の方向に歩いていた、ということが起こりうる。
最初の一歩は、難易度表ではなく求人票を数えることから
ここから引ける実践的な結論は単純だ。最初に取る資格を決めるとき、難易度表を眺めて「取りやすそうな順」に並べるのをいったんやめる。代わりに、自分が志望する業界・職種の求人票を5件から10件ほど並べて、そこに名前が出てくる資格を数えてみる。同じ資格が複数の求人票に繰り返し出てくるなら、それが今その現場で名指しされている資格だということになる。
これは難易度の階段を捨てろという話ではない。CCNAやLPICが不要だという話でもない。ただ、最初の一本をどれにするかという最初の意思決定だけは、難易度の順番より、志望先の求人票という一次情報に近いものを物差しにしたほうが、遠回りが少ない。
なお、tasklogは資格の合格体験記でどの参考書・講座が実際に引用されているかを集計しているサービスで、難易度や優劣を判定するものではない。求人票で名指しされた資格が決まったら、その学習に使う一冊をIT資格の参考書ランキングで確認する、という使い方ができる。
難易度の階段を上る前に、まず求人票を数える。その一手間が、最初の一本を選ぶときの遠回りを減らしてくれる。
(数値出所:tasklog集計、2026年8月時点のスナップショット、暫定値)