GUIDE / 学習の意思決定 / 更新 2026-10-09

アルゴリズムを学ぶ意味は、AIが数秒で解く時代に薄れたか

競技プログラミングの問題を見せると、AIは数秒でそれなりに動く解答を返してくる。LeetCodeに並ぶような典型問題なら、人間が何十分もかけて考えるものを一瞬で片づけてしまう。この光景を見て「アルゴリズムの勉強はもうオワコンだ」という空気が、競プロやLeetCode界隈の一部で漂っているのを見かける。手で解法を書き下す訓練に時間を使う意味が、本当に薄れたように見えるからだ。

ここで立ち止まりたいのは、資格試験の参考書という、競プロとは少し離れた場所に残っていた小さな手がかりだ。ITエンジニアの入門資格として知られる「基本情報技術者試験」向けの参考書を、tasklogで技術記事からの引用数で見ていくと、上位はほぼ全体を広く扱う総合テキストと過去問集が占めている。1位は体系書(キタミ式)、2位・3位も同様の総合テキストで、過去問集もその少し下に続く──ここまでは「資格試験なら当然そうなる」という予想どおりの結果だ。

ところが、総合書と過去問集を除いて初めて現れる、特定のテーマに絞った専門書を見ると、そこに並ぶのは「アルゴリズム×擬似言語」を扱う本だった。ITパスポートより一段難しい程度の、エンジニアの入口にすぎない資格試験でさえ、ネットワークやセキュリティ、データベースといった他の分野を特化して扱う本より先に、アルゴリズムの特化書が引用の土台に顔を出す。実際、この試験の参考書でアルゴリズムや擬似言語を含む科目B対策に特化した専門書は全体の中でまとまった一角を占めていて、6冊に1冊前後の引用がこのジャンルに集まっている。暗記で片づく他分野と違って、アルゴリズムだけは「総合書で済ませられない」何かを持っている、という傾向が見える。

この傾向は、競プロの現場で起きていることの縮図でもある。AIが出せるのは、ある問題に対する「正解の解法そのもの」だ。だがその前段階──目の前の問題をどう定式化するか、どのデータ構造で持つのが適切か、どれくらいの計算量なら制約時間に収まるか、という「発想の型」は、AIに聞く前に自分の頭の中で済ませておかないと、そもそもAIに何を聞けばいいかが分からない。たとえば「ある区間の最大値を何度も求め続けたい」という問題文を読んで、それが尺取り法で済むのか、優先度付きキューが要るのか、セグメント木まで必要なのかを見分けるのは、コードを書く作業ではなく、問題を構造に翻訳する作業だ。ここをAIに丸投げすると、AIが選んだ解法の計算量が本当に十分なのかを判断できないまま、それっぽく動くコードを信じることになる。

つまりオワコンになったのは、正解の解法を手で一から書き下す作業であって、問題をどの構造で捉えるかという発想の型ではない。AIが書いたコードを読んで「このデータ構造の選択で、この入力サイズなら間に合うか」を検算できる人と、できない人の差は、AIが解法を出せるようになったからこそ、むしろ見えやすくなった。書く手間が消えた分、残った仕事は「その解法が妥当かを判定する力」に集約されている。

だとすれば、これから学ぶ人がアルゴリズムに割く時間の使い方も変わってくる。典型問題の解法を何十問も丸暗記するような学習は、AIに任せる範囲が広がった今、優先度を下げていい。代わりに時間を使うべきは、問題文を読んで「これは探索の問題か、動的計画法の問題か、グラフの問題か」を見分ける練習と、自分が選んだ(あるいはAIが選んだ)データ構造の計算量が、その問題の制約に対して本当に十分かを見積もる練習だ。基本情報技術者試験の科目Bが擬似言語の読解とトレースを必修にしているのも、結局この「構造を読む」基礎体力を鍛える場になっているからで、資格の難易度を越えて応用情報技術者試験まで進んでも、この基礎は土台として生き続ける。

AIが解法を出す時代に人間が握っておくべきなのは、解法を書く手ではなく、問題を構造に翻訳する目だ。そこを鍛える練習台として、基本情報技術者(FE)の科目Bや、もう一段上の応用情報技術者(AP)の参考書に目を通してみるのも、悪くない選択だと思う。

tasklogでは、こうした資格試験の参考書が実際にどれだけ技術記事から引用されているかを基本情報技術者(FE)の参考書ランキングとして公開している。今回触れたような「どの分野の本が、どれくらいの比重で読まれているか」は、自分でも確かめられる。

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